今回は乙一さんの『失はれる物語』について、基本情報や受賞・評価、メディア化の情報に加え、この本との出会いやネタバレなしの感想などをまとめました。
長くなりますが、何かの参考になれば幸いです。
この記事で分かること
- 『失はれる物語』の基本情報と刊行の経緯
- 受賞歴や乙一さんの作風について
- メディア化された収録作品について
- 解説・あとがきについて
- 本の入手しやすさと読みやすさの目安
- あらすじ
- 実際に読んでみての感想(ネタバレなし)
この本について
基本情報
| 書名 | 失はれる物語 |
| 著者 | 乙一 |
| 出版社 | 角川書店(現KADOKAWA)/角川文庫 |
| 刊行の経緯 | 単行本 2003年刊 → 文庫版 2006年6月24日刊(今回ご紹介するのはこちら) |
| 定価 | 792円(本体720円+税・現行版)※購入した第11版の奥付表記は552円+税 |
| 判型・ページ数 | 文庫判・384ページ |
| 購入店舗 | ブックオフ |
| 購入価格 | 110円(税込) |
| 状態 | カバーに汚れや傷、日焼けあり、中身は綺麗、帯無し |
| 版 | 第11版(平成19年6月10日発行) |
単行本は2003年に角川書店より刊行されました。既刊の短編集『きみにしか聞こえない』『さみしさの周波数』『失踪HOLIDAY』から5作品を選び、書き下ろしの「マリアの指」を加えた全6編で構成されています。その後2006年6月に文庫化される際、「ボクの賢いパンツくん」「ウソカノ」の2編が新たに加わり、現在の全8編の形になりました。
現行版の定価はKADOKAWA公式サイトによると792円(本体720円+税)ですが、私が購入した第11版(平成19年6月10日)には552円+税と表記されています。

受賞・評価
著者の乙一さんは、1996年に『夏と花火と私の死体』で集英社ジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞してデビューし、2003年には『GOTHリストカット事件』で本格ミステリ大賞を受賞しています。
乙一作品はしばしば「白乙一」「黒乙一」という言葉で語られ、透明感のある切ない作風は「白乙一」、残酷な描写を淡々と描く作風は「黒乙一」と呼ばれています。
KADOKAWA公式サイトでは本作を「乙一の里程標(マイルストーン)」と紹介しており、切ないテイストの作品が中心の本作は「白乙一」を代表する一冊と位置づけられているようです。
解説・あとがきについて
本作にはいわゆる第三者による解説や、著者自身によるあとがきは収録されていませんが、その代わり「あとがきにかえて」という位置づけで、書き下ろし短編「ウソカノ」が収録されています。短いながらも惹き込まれる設定で、読後感の良い物語でした。
メディア化・派生作品
収録作のうち、いくつかは映像化もされています。
2007年公開の映画『きみにしか聞こえない』(監督:荻島達也さん、主演:成海璃子さん・小出恵介さん)は、「Calling You」が原作となっています。
この記事を書くために調べていたらAmazon Prime Videoで配信されているのを見つけたので、記事を書く手を一旦止めて視聴してきました。
原作と設定が異なる部分もありましたが、乙一さんの書く切ない物語の世界観が綺麗に表現されていて、とても良い映画でした。映像や音楽、表情などが加わることでより感情移入でき、展開を知っているのに最後は泣いてしまいました。
この映画の主題歌はなんとドリカム(DREAMS COME TRUE)が担当しており、物語とリンクする形で書き下ろされた曲は映画の雰囲気ととてもマッチしています。YouTubeの公式チャンネルにはライブ映像がありました↓
また、2008年には「傷」が『KIDS』として映画化されています。(監督は『きみにしか聞こえない』と同じ荻島達也さん、出演は小池徹平さん、玉木宏さん、栗山千明さん他)
こちらは槇原敬之さんが主題歌を担当されています。どの作品も、出演者や主題歌が豪華ですね。
「手を握る泥棒の物語」は、2004年に犬童一心さん監督、内山理名さん・忍成修吾さん主演で短編映画になっているようです。劇場公開ではなく当時のインターネット配信コンテンツとして公開されたとのことで、調べてみましたがVODなどでの配信は見つかりませんでした。
手に取りやすさ
入手性(手に入れやすさ)
文庫版は2006年の発売以来、版を重ねて読み継がれてきた作品で、私が購入した第11版も発売から1年ほどで刷られたものなので、発売当時からかなりの売れ行きだったことがうかがえます。中古市場でも比較的見つけやすい一冊で、ブックオフ巡りをしていると時々出会うことがあります。
読みやすさの目安
全8編の短編集となっていて、それぞれ世界観が独立しているためスキマ時間にも読みやすい構成だと思います。繊細な設定・文章が多いので、自宅やカフェなどでゆっくり読む方が集中できそうです。
出会いと物語
なぜこの本を手に取ったか
ふらっと立ち寄ったブックオフでタイトルが気になって手に取り、裏表紙のあらすじを読んで独特な設定に興味を持ち、短編集で読みやすそうだったので購入しました。これが私にとって初めての乙一作品です。
あらすじ
事故によって右腕以外の感覚を失い寝たきりの主人公と、その腕を鍵盤に見立てて日々の想いを伝え続けるピアニストの妻。ふたりの静かなやり取りを描いた表題作「失はれる物語」をはじめ、本書には切なさと優しさが同居する8つのストーリーが収録されていて、乙一さんらしい世界観を味わえる一冊です。
読んでみて(ネタバレなし)
表題作「失はれる物語」は、とにかく設定の秀逸さに脱帽です。どうやったらこんな設定を思いつくのか想像もできません。
乙一さんの作品はこの後にもたくさん読んでいますが、どの物語も「天才が思いついた独創的な設定を一気に広げ、一篇かけて丁寧に回収する」ような感じがとても好きです。ただ設定が変わっているだけではなく、読みやすくて感情移入しやすい文章で丁寧に伴走してくれるので「置き去り感」がないんですよね。
細かい設定の謎が最後まで明かされないまま終わる話もあるので、読みながら細部にツッコミを入れがちな人には合わないのかもしれませんが、私はフィクションと割り切れるタイプなのでまったく気になりません。
「Calling You」は今回映画も視聴しましたが、2000年代の「携帯電話の時代」をリアルタイムで生きていた私には入り込みやすく、お気に入りの一篇となりました。
まとめ
こんな人におすすめ
- 切なく、心に残る短編小説を読みたい人
- 乙一さんの作品をはじめて読む方
- ホラー色の強い「黒乙一」より、まずは「白乙一」から読んでみたい人
- 独創的な設定の世界観が好きな方
- スキマ時間で読める短編集を探している人
今回は乙一さんの『失はれる物語』をご紹介しました。
ブックオフで110円で出会った本作から乙一ワールドにハマり、今では好きな作家の一人として真っ先に名前を挙げるほどになりました。これだから古本屋巡りはやめられません。
この記事が皆さんの本選びの参考になれば幸いです。


